福祉業界の闇? その1
陶芸作品の制作を始め、その材料を買うためには陶芸以外の仕事で資金を稼ぐことが必要。そのために資格を取り関わったのが福祉の仕事。
まずはやりがいがあって時給もいいホームヘルパーでもやろうと思い、ヘルパー2級の資格を取って給料面・労働条件の良さそうな施設に応募。
ところが今と違って当時は福祉人気が高く、応募しても次々に不採用!
近隣市にある労働条件のいい精神障害者施設などは20倍ほどの倍率の応募があり、書類審査は何とか通ったが、上から目線の厳しい面接でさんざんなじられたあげく不採用。
あまりに仕事が決まらないため自分の条件を下げて、正職員の月給が12万6000円程の施設に応募しても採用にならない。
これは困った。福祉にこだわらずに他の職種を探すか?
でもIT業界をリストラされた時に「収入にこだわらず、これからは人のためになる仕事、社会に貢献できる自分にとって意味のある仕事をしよう」と思っていたことを思い出す。
仕事が決まらず困っている時に、友達が働いている知的障害者施設でボランティアを募集しているから経験のためにも手伝いにきてくれないかというお誘いがあった。
その施設では陶芸作品を作っていて年末から年始にかけて干支の置物をたくさん作らないといけないので人手がほしいとのこと。
経験にもなるしボランティアも悪くないなと思い、週3日から4日ぐらいその施設に通うようになった。
作業内容としては慣れた陶芸だし、障害を持った利用者さんとの関わりも良好。楽しみながら良い経験をさせてもらっていた。
ただ施設長のパワハラ加減が半端なく、利用者さんがいてもかまわず大声を出して怒ったり、職員に対する暴言、職員との言い合いの日々。
ある時、職員数20名程度の職場の職員11名がいっぺんに辞めてしまった。
困った施設側はボランティアであるTOURIに「新しい職員が入るまで職員として勤務してくれませんか?」と言ってきた。
施設長はさておき、利用者さん・職員・施設に慣れてきていたので「自営業の陶芸の仕事をメインでやりたいので非常勤で週3,4日程度なら..」ということを伝えた。
そしてすぐにその施設で働き始めることになるが雇用契約の書類を見てびっくり。
正職員のフル勤務。
困ったな~..でも施設も困っているようだし、職員がいないのでは利用者さんも困り安全も確保できない。仕事を定時に帰ってあとは土日にしっかり陶芸作品作りができればいいかと正職員での契約をした。
ところがこの後最悪の展開に..
福祉の職場の個人的なイメージは日中の作業が終わって職員ミーティングも終わればほぼ定時で帰るようなイメージだったが.. とんでもない。
施設の干支の置物作りはたくさんの注文が入っていて細かく納期が決まっているため残業・休日出勤しても作品を完成させなければいけない。その陶芸作業の担当になったTOURIは作業に追われ毎日日付けが変わる時間ぐらいまでの残業。プラス土日もほぼ出勤。
入職当時は自営業のほうでも大量注文を抱えていてこちらも納期が決まっていたため、日付けが変わってから家に帰り、注文された作品を作るということをやっていた。
入職して最初の3,4ヶ月は睡眠時間3時間程度の毎日。
本気で倒れるんじゃないかと思っていた。
施設には新しい職員が何人か入ったのでその親睦会ということでTOURIが飲み会を設定したことがあった。
親睦会の日、どうしても飲み会の始めから参加したいというTOURIの歳の半分ぐらいの新卒職員が自分の担当の仕事が終わっていないにもかかわらずTOURIに対して「この仕事は今日中に終わらせないといけないのでやっておいてください」と自分の仕事をTOURIに振って飲み会へ。
TOURIはなぜかその仕事をやらざるを得なくなり、彼の仕事を終わらせた上で、自分が担当の干支の置物づくりをやることになった。
幹事である自分が飲み会に行くどころではなくなり、やっとその日やるべき仕事が終わった..と帰ろうとして施設を出ると外は明るくなり始めていて新聞配達のバイクが走っていた。
そんなこともあった。
そんな感じで休日なし、月の残業時間は200時間以上という超多忙状態。自営業の陶芸などやる時間はまったくないということで自営業を廃業することにした。
施設長は「残業時間が200時間以上なんて!そんなの労基署にばれたら俺の首がすっ飛んじまうじゃねえか。残業代を出すのもおしい」ということで残業時間の規定を上限なしから上限30時間に変更。さらに「残業をする場合はタイムカードを押してから作業するように」とパワハラ発言。
福祉業界への応募は多い中、なぜかこの施設には応募が少なくなかなか職員が入ってこない。どうやらハローワークのほうに「問題のある施設」という情報が行っていて、この施設に応募したいという人がいると「この施設にはパワハラなどの問題があって職員が長続きしません。それでも応募しますか?」とハローワーク側は伝えるとのこと。
実際に「そう言われたけれど他の施設で採用にならないからここに来ました」という職員もいた。
それもそのはず..TOURIが入職してからの6年間で51名の職員が辞めていった。
20名程度の施設ではありえない数字。
入る職員入る職員、少しでも施設長に口答えしたり意見を言ったりすると目をつけられ、いじめられて辞めることになってしまう。
中には重度のうつ病と診断されて、退職後も働くどころか外にも出れなくなってしまった人が何人も。
TOURIも目をつけられ激しいパワハラを受けたがちょっとやそっとでメゲるようなヤワじゃない。仲間を守るために労働組合を立ち上げて団体交渉などをして戦った。
時間をかけて施設長のパワハラ・セクハラ・横領を記録し証拠の書類や音声なども集めた。
個人的には意味もなくボーナスカットされたり、職員ミーティングのたびに「TOURIは早く退職願いを出すように!!」と言われ続け、最初のうちは軽く流していたが、日々言われていると体が勝手に反応するようになり、片耳が聞こえなくなっていき、顔と頭の半分がしびれて感覚がなくなり、出勤時に職場が近くなると耳鳴りがし始め気持ちが重くなるという症状が出始めた。
心療内科に行くと「うつ病」との診断。診断書を書いてもらいこれも「パワハラの証拠」ということで保管していた。
強い抗うつ薬を処方されたせいで仕事中も眠くて眠くて起きていられない。送迎の運転中も利用者さんを乗せているにもかかわらずウトウト..運転中の記憶も途切れ途切れで信号無視を何度したことか。
こっちがつぶれるか施設長を退職に追い込むか..どっちが早いかという状態の時にTOURIはグループホームに左遷された。これが大きかった。
日中施設から離れ、施設長と関わることがほとんどなくなったことでうつ症状は見る見る改善。
そして時間をかけて集めた「施設長のパワハラの証拠」となる文書と音声をまとめ理事長に提出。これが動かぬ証拠となり施設長は解任されることになった。
新しい施設長も来て、これでやっと落ち着いて仕事ができるなと思ったのも束の間、グループホームで事件が起きた。
ある晩、グループホームに新しく入って来た重度自閉症の利用者さんと前からいる利用者さんの間でテレビのチャンネル争いが始まる。そこに仲裁に入ったTOURIはその体重100㎏超の新しい利用者さんからいきなりボコボコに暴行を受けた。
手を抑えるとキックと噛みつきが来て、手を離すと目を狙って殴りかかってくる。自閉症の人に多いとのことだが人の視線に敏感なために目を攻撃しようとするようで左右の目を何度も殴られた。
おそらく数分間..殴り疲れて大人しくなったところでやっと救援依頼の連絡を入れTOURIは夜間救急で病院に運ばれた。
CT検査の結果は特に異常はなかったが上半身・顔などに切り傷・内出血。眼球はズレ、目の焦点が合わない。時間が経つと目に炎症が起きてぼやけて良く見えない。
そんな状態だったが「代わる職員がいないからこのままグループホームに戻って夜勤を続けられるか?」との上司からの言葉。どんな施設だ..
結局この事件は利用者さんには責任能力がないということで施設側の管理体制に問題があったのではないかという話が持ち上がったが、施設側はこの事件を隠蔽する方向に決めたようで施設長から「関係機関・職員・保護者にはこちらから説明をしておくから自分からは決して口外しないように」と言われた。
実際に関係機関や保護者には何も説明していないことが後で分かった。
目が不自由になり送迎の運転ができなくなったTOURIは休職し眼科に通院していたが、すぐに目の回復が止まりこれ以上改善しない「症状固定」という状態になり労災扱いから外れて自費で治療の継続をせざるを得なくなった。
施設側が隠蔽しようとしているこの事件のことに関して「他者に口外し国家資格保有者の倫理規定に反することを行なった」とTOURIは疑いをかけられ資格の剥奪をちらつかされて結局退職することになった。
今思い返すとこの施設に勤務していた時の大きなストレスががんの原因になったのではないかと思うほどの嵐の日々だったが.. その答えは誰にもわからない。
また、労働組合を一緒に立ち上げた職員は施設長からのパワハラに耐えかねて組合を脱退しTOURIは1人で戦っていたわけだが、その脱退した職員はその後もパワハラを受け続け、肉体的にも精神的にも限界を超え突然死してしまった。
また1人、貴重な仲間を失ってしまった。
話が長くなりすぎたので「福祉業界の闇?」の続きは「その2」へ続く..

